横のネットワークは企業を越え、グループを越え、国境をも越える(小島)
ITは他の機能と組み合わせたときにこそ本当の力が発揮できる(井上)
井上 IT業界において、変化への対応力というものが、重要な勝負の分かれ目になってくるというお話でしたが、「お客様対話力」「価値構想力」「技術応用力」という、当社のビジョンである「3つの力」を高め、お客様の価値創造を一生懸命見つめていくことが、その変化に対応できる最大の施策になると、私は考えています。変化は必ず市場で起きますし、お客様の目指している方向の中で起きますから、そのお客様の価値創造を、しっかりわれわれの「人」と「技術」が考えていくことが、何よりも大切なことだと思っています。変化そのものがわれわれのビジネスの本質と思って舵取りをしています。
小島 今、井上社長がおっしゃったことは、そのまま三菱商事にも当てはまりますね。今や商事会社も中間介在者的な存在ではなくなっています。お客様に様々なご提案をしながら、新しいビジネスモデルをお互いにつくっていく「新・産業イノベーター」というべき形態になっています。私が社長に就任する前まで担当していた新機能事業グループでは、その機能を金融、IT、ロジスティクス、マーケティングの4つの頭文字をとって「FILM」と呼んでいました。この4つの機能を持って、営業グループと一緒になってお客様と新しいビジネスモデルを考えるわけですが、やはり新しいソリューションを提供するときには、その中でもITが大きな武器になるんです。ですから、その攻撃力の高い武器を、アイ・ティ・フロンティアには提供していただきたい。さらに言うならば、アイ・ティ・フロンティア自体に、金融や物流との接点を持ってもらって、三菱商事と一緒に提案するという形になれば、三菱商事の力にもなるし、結果的にはアイ・ティ・フロンティアの力になると思います。
井上 われわれの本質はもちろんITの機能ですが、今後はそれにとどまらず、他の企業としっかり連携を取って、お客様の価値創造を徹底的に考えていくという方向に、自然と進んでいくと思います。ITだけでできることには限界があって、金融や物流という他の機能と組み合わせたときにこそ、本当の力が発揮できるものですからね。ITを本質的コアにしながら、その組み合わせがしっかりできるという会社に、われわれも変化していかなくてはなりません。そのためにも、三菱商事の新機能事業グループが行ってきた、組織の中の横同士の機能が、当社にも必要だと思い、今年の新体制で、縦横のマトリックス経営をやるということを掲げたわけなんです。
小島 現在のIT企業の役割には、コンサルティング的なものが含まれるようになってきていて、コンサルティング企業がITシステム会社を引き入れるケースも増えていますよね。ですから会社単独の力に限界があると感じたら、コンサルティング企業と一緒になって仕事をするという選択肢もあると思いますよ。私の言う横のネットワークとは、企業も越え、グループも越え、場合によっては国境をも越えるということさえ含んでいます。それがお客様が満足するご提案につながり、自分たちも力がついてくるのならば、それはぜひ自分たちの新しいモデルにしていこうと。これはぜひアイ・ティ・フロンティアとしても考えてもらいたいことですね。グループの中のコンサルティング企業と連携したり、わが社の戦略研究所や三菱総合研究所などに相談したり、コミュニケーションの取り方は、いろいろとあると思いますよ。
井上 それはわれわれの今後の方向性においても、非常に大事なお話ですね。実はすでに提携も視野に入れて、お話を進めさせていただいている部分もあるのですが、ぜひ現実的なアクションとして考えていきたいと思います。また、もう1社の株主である日本アイ・ビー・エムも、IBCSという非常に強いコンサルティング部隊をお持ちなので、こちらともいろんな形で、提携をしっかり進めたいですね。
経営のベースとなるITをしっかりと支えられる人材を輩出してほしい(小島)
三菱商事の持つグローバルな能力を活用し海外でも活躍できるCIO人材を(井上)
小島 さらにもうひとつ、アイ・ティ・フロンティアへの具体的な要望があります。現在、三菱商事には、様々な業界にわたって500以上の連結事業投資先がありますが、どの企業もITの専門家を必要としています。先ほども言ったように、現在の経営のインフラはITですからね。そのインフラのベースとなるITをしっかりと支えられる人材が、各企業にはそれほど揃っているわけではないんです。ですから、そういう人材を派遣してもらえればありがたいし、三菱商事そのもののIT人材の教育にも、アイ・ティ・フロンティアには貢献していただきたいですね。
井上 非常に具体的な当社のイメージを、小島社長からいただいたなと思います。三菱商事というのは、CEO、CFOの人材を育てて、三菱商事グループにどんどんと輩出していく母艦であり、アイ・ティ・フロンティアは、実は三菱商事グループの各社で活躍するにふさわしい能力・経験・見識を持ったCIOをどんどん輩出していく母港なのではないかというイメージです。
小島 実は私自身も、この3月まで三菱商事のCIOでもあったんです。それで、CIOとは何をすればいいのかということを考えたのですが、ひとつには自社のIT基盤を整備するという基本的なことがありますよね。でも、それだけでは足りないんです。ITを使って、自分たちのビジネスをさらに展開するにはどうしたらよいかということを考えるのも、もうひとつのCIOの重要な仕事なんです。そこまでできる人材が、アイ・ティ・フロンティアから様々な形で、それぞれのグループ企業に派遣される時代になってくるといいなと、今、井上社長の話を聞いて思いました。
井上 その日はきっと遠くない、いや遠くあってはいけないと思います。そういう人材を育てるためには、まずITの専門性から入るというアプローチもあるでしょうし、お客様のビジネスの業態をしっかり把握するコンサルティングから入っていくアプローチもあるでしょう。山の登り方はいくつかあると思いますが、いずれにせよ最終的な形は、どんな業界・形態の会社のCIOでもできるような人材が早く育ってほしいと思います。
小島 それから、これからは、海外に展開している事業会社にも視野を向けてほしいですね。三菱商事のお客様は海外にどんどん事業展開している。こういうお客様の事業をIT面からサポートする。事業基盤を固めながらお客様にとってグローバルなワンストップショッピングが可能なIT会社になってほしいと思います。
井上 海外でも活躍できるCIO人材ということですね。そのためにも、中国やインドでのオフショア開発を通じて、力を蓄えていかなくてはならないと思います。現状においては、まだ三菱商事の持っているグローバルな能力、アクセスを十分に使い切っているとは言えませんが、同業他社の中では、グローバル展開を考えても非常に恵まれた環境にいるわけですから、目指すべき目標としなくてはいけないですね。
小島 私自身も設立に関わった会社として見ると、この4年の間に、いろいろと苦労をしながら成長してきたと思います。三菱商事などのビジネスを通じて、多くの業界との接点ができてきましたから、現時点でも、あらゆるお客様の要望に十分に応えられる会社になっていると思いますよ。私が期待する企業像は、社員全員が価値を共有した「一体感のある企業」と、新しいことに向かって絶対に逃げないチャレンジング・スピリットを持った「強い企業」。三菱商事としては、そのために万全のバックアップをする用意がありますから、ぜひ頑張ってください。
井上 心強いお言葉ありがとうございます。
*J Talk:井上社長と社員が直接対話する場(Jは井上の名前に由来)