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三菱商事株式会社 小島順彦社長との対談
IT Frontier NEWS SUMMER 2005 Talk With欄 掲載
今回、対談相手としてお招きしたのは、当社の株主であり、また最大のお客様でもある三菱商事の小島社長。当社創設時の会長でもあった小島社長は、当社にとって、言わば「生みの親」とも言える存在です。今後のIT 企業と、当社を含む三菱商事グループの未来像。その実現のために必要なダイナミックな横の連携と、当社の役割。何事に対しても逃げ出さない三菱商事のDNAは、アイ・ティ・フロンティアにも脈々と受け継がれています。
三菱商事はCEO、CFOを輩出する母艦、アイ・ティ・フロンティアはCIOを輩出する母港:

リスクと向かい合うチャレンジング・スピリットを(小島)
安定したシステムの提供を前提に一歩ずつでも新しいものに(井上)

井上 今回は、当社にとっては生みの親でもいらっしゃる小島社長にお越し頂き、大変嬉しく思っています。実は、小島社長には、先日も当社の社員とお話をする機会をつくって頂いたのですが、いかがでしたか?
小島 皆さん大変盛り上がっていて、やる気があるなと思いました。僕は社員に対して、リスクと向かい合ったときに逃げるのではなく、しっかりと取り組む「チャレンジング・スピリット」を持ってほしいと常々言っています。今までやったことのないことにはリスクがつきものですが、そのリスクをミニマイズすることを考えながら、新しいことに挑戦してほしい。グループ企業の社員にも、少なくとも同じ方向を向いていてもらいたいなと思っていたのですが、先日のパーティーでは、アイ・ティ・フロンティアの皆さんに、大きな手ごたえを感じました。頼もしいと思いましたよ。

井上 小島社長が持っていらっしゃるエネルギーが、わが社の社員に乗り移ったのだと思いますよ。みんなの目が、いつもより輝いていましたからね。技術者というのは、信頼性の高い、安定したシステムをお客様に届ける役割を持っています。これは、とても大事なことです。しかしながら、ともすればチャレンジング・スピリットを忘れがちになる。だからこそ、逆にいつも言い続けていかなければいけないんですよね。
小島 今までやってきたことの中に埋まっているほうが楽ですが、やはり中長期的視点から一歩先を目指そうと思わないと、成長になりませんよね。
井上 特に当社は、技術的なチャレンジング・スピリットを忘れてはいけない。名前が示す通り、ITのフロンティアにいるべき会社ですし、お客様からもそういう期待があります。安定したシステムの提供は大前提として、お客様がそれぞれの分野で競争力を高めていくためには、一歩ずつでも新しいものにチャレンジしていかないと、絶対に切り開けないですからね。今のお話を伺って、非常に勇気づけられた思いがします。

「問題意識」と「ビジネス感度」を持ってコミュニケーション・ネットワークをつくる(小島)
一体感醸成のための第一歩はコミュニケーション理想は横連携の「J抜きTalk」(井上)

井上 ところで、三菱商事の社長になられてから、先日の当社の例だけでなく、グループ企業の社員と直接話される場を積極的につくられていらっしゃいますよね。
小島 最近私は、「三菱商事」という単体の企業名ではなく、「三菱商事グループ」という言葉を盛んに使っています。それはどうしてかというと、現在のわが社の収益を見ると、連結収益が7割くらいを占めるんです。つまり、これからは三菱商事グループ企業の成長というものが、三菱商事そのものの成長につながってくるということですね。グループのさらなる成長を期待するためには、グループ企業の支援をしていかなくてはならない。そのためにも、できる限り事業投資先とコミュニケーションを取ったり、グループの中でも核になるような企業の社員とは、直接話すような場を設けていきたいと思っているんです。

井上 しかし時間を捻出するのが大変だ。本当にたくさんのグループ企業がありますからね。
小島 でも、こちらもエネルギーをもらうことが、結構多いですよ。話してみて初めて気がつくこともあるし、その時の対話をベースに、後でメールが来たりすることもある。そういうのはすごくいいなと思います。井上社長が続けている「*J Talk」でも、そういうことはありませんか?
井上 はい、最初は一方通行だったものが、次第に双方向のコミュニケーションになりつつあって、新たな展開が望めるようになってきました。
小島 「J Talk」のコミュニケーションだけではなくて、参加している社員同士が横でコミュニケーションを取ることが、次の展開として期待されることですね。縦だけじゃなく、成功体験も失敗体験も共有するという横の情報共有もオープンにできる雰囲気というのは、会社に一体感がないとなかなかできないものですが、それができれば、またより強い一体感が生まれると思います。「J Talk」をスタートとして、井上社長がいなくても、ちょっとみんなが集まって話したり、メールでやり取りするという雰囲気が生まれるといいですね。
井上 私も一番大事なのは一体感だと思います。そのためには、やはりコミュニケーションが第一歩ということで、「J Talk」という、私中心のコミュニケーションの場を設けているのですが、おっしゃる通り、理想は横連携の「J抜きT a l k 」ですね。たまたま先日の「J Talk」で、「井上さんと話すのも意味があるけども、初めてお会いする有名なプロジェクト・マネジャーの方からも、成功体験や失敗体験を聞きたい。そういう教訓をシェアする場が欲しかったので、非常にありがたい」という話が若手社員からありました。やっとそういう萌芽が見えてきたかと、非常に心強く思いました。
小島 私はいつもわが社の社員に、「常に“問題意識”を持って仕事に取り組んで欲しい」ということを言っています。ただ漫然と仕事をするのではなく、「今度はここを改善しよう」とか「プロジェクトの中でのこの仕事の意味は?」ということを考えるということです。それともうひとつ、次の時代への変化に対する“ビジネス感度”も必要だと言っています。これらを持つことで、コミュニケーション・ネットワークがつくりやすくなる。ネットワークというものは、自分にそれなりの価値がないと、なかなかつくれないもので、話を聞きたい人ばかりが10人集まっても、ネットワークにはなりません。やはり自分が持っていることを披露して、それをみんなに評価してもらうというコミュニケーションじゃないと、長持ちしませんよね。特にアイ・ティ・フロンティアのように、ある業界でリーダーになるべき企業においては、各社員がそういう市場価値を持った人間になってほしいと思っています。
井上 確かに今のアイ・ティ・フロンティアにとっては、まず一人ひとりの価値を高めることがスタート地点だと思います。それぞれが多様性を認めて、市場で認められる価値をつくっていく。その次に、同じ価値観を共有するチームとして一体感を持って、お客様に接する、技術に向かっていく。実はそうした一体感を醸成するためにも、このたび小島社長にお願いをして、私自身もアイ・ティ・フロンティアに100%転籍をしたわけなんです。24時間・365日、社員と一丸になって、「人と技術が生きる価値創造企業」に向かおうと、決意を新たにしているところです。

三菱商事の他業界へのアクセスを利用して「強い企業」を目指してほしい(小島)
次世代を探究する三菱商事のDNAは当社にも受け継がれている  (井上)

小島 そうした個人のコミュニケーションと同様に、企業間のコミュニケーションというものも、三菱商事グループにとって、取り組んでいかなくてはならない、非常に重要な課題なんです。
井上 それが、先ほどおっしゃられたグループ企業への支援という形となって現れているわけですね。中期経営計画の中で、連結
経営インフラの強化・整備ということを強調されていらっしゃいますが、それも重要なコミュニケーション・ツールのひとつですね。

小島 連結経営インフラというのは、まさにITですよ。特に、四半期決算が主流になってきた現在、決算から公表までの時間を短くするには、ITインフラの整備が不可欠です。現在、グループ経営の基盤として大切なものを上げれば、まずはIT、そして人材。それから最近非常に注目されているセキュリティやコンプライアンスというものも、大変大事な要素です。こういうものを、どのようなガバナンスでまとめていくかということが、直近の大きな課題です。そういう意味では、アイ・ティ・フロンティアに期待するところは大きいですね。
井上 以前からアイ・ティ・フロンティアに対しては、三菱商事グループの中核企業として、IT業界におけるリーディングカンパニーになってほしいということと、今おっしゃった、事業投資先を含めたグループの、ITとしての経営インフラをしっかり支援、サポートしてほしいという明確な2つのミッションを頂いています。そのミッションをしっかり舵取りして、当社の経営の中に落とし込んでいくことが、私にとっての最重点課題だと考えています。
小島 一口にITと言っても、非常に変化の激しい世界ですからね。アイ・ティ・フロンティアが生まれた4年前と比べてみても、隔世の感があります。インターネットビジネスも広がりを見せ、IP電話なども普及してきました。またハードウェアのコスト競争はますます進み、パイオニアとして牽引してきたIBMもPC事業を売却。システム設計の現場も中国やインドへと、大きく様変わりしています。そうした変化の中における競争力の本質は、次の時代が先取りできる能力だと思います。そういう意味では、井上社長がよくおっしゃっている「ITマネジメントサービスプロバイダ」というコンサルティング的な発想は、重要なカギになるでしょうね。そしてそのカギを有効なものにするために、三菱商事が持つあらゆる業界とのアクセスをうまく利用してほしい。そうすれば、アイ・ティ・フロンティアは業界の中で非常に強い企業になれると、私は信じているんです。
井上 アイ・ティ・フロンティアの将来にとって、素晴らしい示唆を与えていただいたと思います。小島社長がおっしゃった、次の世代の新しいものをグローバルな視点で探していくという姿勢は、三菱商事が総合商社として何十年もかけて育ててきたDNAとして、当社にも色濃く残っていると感じますし、あらゆる業界へのアクセスを通じて、様々なIT課題を解決させていただける機会が与えられていることは、ノウハウの蓄積という点でも、大きな武器となります。こうした機会を、一つひとつ着実にこなしていくことが、当社の企業力を強くしていくことにつながると思います。

横のネットワークは企業を越え、グループを越え、国境をも越える(小島)
ITは他の機能と組み合わせたときにこそ本当の力が発揮できる(井上)

井上 IT業界において、変化への対応力というものが、重要な勝負の分かれ目になってくるというお話でしたが、「お客様対話力」「価値構想力」「技術応用力」という、当社のビジョンである「3つの力」を高め、お客様の価値創造を一生懸命見つめていくことが、その変化に対応できる最大の施策になると、私は考えています。変化は必ず市場で起きますし、お客様の目指している方向の中で起きますから、そのお客様の価値創造を、しっかりわれわれの「人」と「技術」が考えていくことが、何よりも大切なことだと思っています。変化そのものがわれわれのビジネスの本質と思って舵取りをしています。
小島 今、井上社長がおっしゃったことは、そのまま三菱商事にも当てはまりますね。今や商事会社も中間介在者的な存在ではなくなっています。お客様に様々なご提案をしながら、新しいビジネスモデルをお互いにつくっていく「新・産業イノベーター」というべき形態になっています。私が社長に就任する前まで担当していた新機能事業グループでは、その機能を金融、IT、ロジスティクス、マーケティングの4つの頭文字をとって「FILM」と呼んでいました。この4つの機能を持って、営業グループと一緒になってお客様と新しいビジネスモデルを考えるわけですが、やはり新しいソリューションを提供するときには、その中でもITが大きな武器になるんです。ですから、その攻撃力の高い武器を、アイ・ティ・フロンティアには提供していただきたい。さらに言うならば、アイ・ティ・フロンティア自体に、金融や物流との接点を持ってもらって、三菱商事と一緒に提案するという形になれば、三菱商事の力にもなるし、結果的にはアイ・ティ・フロンティアの力になると思います。
井上 われわれの本質はもちろんITの機能ですが、今後はそれにとどまらず、他の企業としっかり連携を取って、お客様の価値創造を徹底的に考えていくという方向に、自然と進んでいくと思います。ITだけでできることには限界があって、金融や物流という他の機能と組み合わせたときにこそ、本当の力が発揮できるものですからね。ITを本質的コアにしながら、その組み合わせがしっかりできるという会社に、われわれも変化していかなくてはなりません。そのためにも、三菱商事の新機能事業グループが行ってきた、組織の中の横同士の機能が、当社にも必要だと思い、今年の新体制で、縦横のマトリックス経営をやるということを掲げたわけなんです。
小島 現在のIT企業の役割には、コンサルティング的なものが含まれるようになってきていて、コンサルティング企業がITシステム会社を引き入れるケースも増えていますよね。ですから会社単独の力に限界があると感じたら、コンサルティング企業と一緒になって仕事をするという選択肢もあると思いますよ。私の言う横のネットワークとは、企業も越え、グループも越え、場合によっては国境をも越えるということさえ含んでいます。それがお客様が満足するご提案につながり、自分たちも力がついてくるのならば、それはぜひ自分たちの新しいモデルにしていこうと。これはぜひアイ・ティ・フロンティアとしても考えてもらいたいことですね。グループの中のコンサルティング企業と連携したり、わが社の戦略研究所や三菱総合研究所などに相談したり、コミュニケーションの取り方は、いろいろとあると思いますよ。
井上 それはわれわれの今後の方向性においても、非常に大事なお話ですね。実はすでに提携も視野に入れて、お話を進めさせていただいている部分もあるのですが、ぜひ現実的なアクションとして考えていきたいと思います。また、もう1社の株主である日本アイ・ビー・エムも、IBCSという非常に強いコンサルティング部隊をお持ちなので、こちらともいろんな形で、提携をしっかり進めたいですね。

経営のベースとなるITをしっかりと支えられる人材を輩出してほしい(小島)
三菱商事の持つグローバルな能力を活用し海外でも活躍できるCIO人材を(井上)

小島 さらにもうひとつ、アイ・ティ・フロンティアへの具体的な要望があります。現在、三菱商事には、様々な業界にわたって500以上の連結事業投資先がありますが、どの企業もITの専門家を必要としています。先ほども言ったように、現在の経営のインフラはITですからね。そのインフラのベースとなるITをしっかりと支えられる人材が、各企業にはそれほど揃っているわけではないんです。ですから、そういう人材を派遣してもらえればありがたいし、三菱商事そのもののIT人材の教育にも、アイ・ティ・フロンティアには貢献していただきたいですね。
井上 非常に具体的な当社のイメージを、小島社長からいただいたなと思います。三菱商事というのは、CEO、CFOの人材を育てて、三菱商事グループにどんどんと輩出していく母艦であり、アイ・ティ・フロンティアは、実は三菱商事グループの各社で活躍するにふさわしい能力・経験・見識を持ったCIOをどんどん輩出していく母港なのではないかというイメージです。
小島 実は私自身も、この3月まで三菱商事のCIOでもあったんです。それで、CIOとは何をすればいいのかということを考えたのですが、ひとつには自社のIT基盤を整備するという基本的なことがありますよね。でも、それだけでは足りないんです。ITを使って、自分たちのビジネスをさらに展開するにはどうしたらよいかということを考えるのも、もうひとつのCIOの重要な仕事なんです。そこまでできる人材が、アイ・ティ・フロンティアから様々な形で、それぞれのグループ企業に派遣される時代になってくるといいなと、今、井上社長の話を聞いて思いました。
井上 その日はきっと遠くない、いや遠くあってはいけないと思います。そういう人材を育てるためには、まずITの専門性から入るというアプローチもあるでしょうし、お客様のビジネスの業態をしっかり把握するコンサルティングから入っていくアプローチもあるでしょう。山の登り方はいくつかあると思いますが、いずれにせよ最終的な形は、どんな業界・形態の会社のCIOでもできるような人材が早く育ってほしいと思います。
小島 それから、これからは、海外に展開している事業会社にも視野を向けてほしいですね。三菱商事のお客様は海外にどんどん事業展開している。こういうお客様の事業をIT面からサポートする。事業基盤を固めながらお客様にとってグローバルなワンストップショッピングが可能なIT会社になってほしいと思います。
井上 海外でも活躍できるCIO人材ということですね。そのためにも、中国やインドでのオフショア開発を通じて、力を蓄えていかなくてはならないと思います。現状においては、まだ三菱商事の持っているグローバルな能力、アクセスを十分に使い切っているとは言えませんが、同業他社の中では、グローバル展開を考えても非常に恵まれた環境にいるわけですから、目指すべき目標としなくてはいけないですね。
小島 私自身も設立に関わった会社として見ると、この4年の間に、いろいろと苦労をしながら成長してきたと思います。三菱商事などのビジネスを通じて、多くの業界との接点ができてきましたから、現時点でも、あらゆるお客様の要望に十分に応えられる会社になっていると思いますよ。私が期待する企業像は、社員全員が価値を共有した「一体感のある企業」と、新しいことに向かって絶対に逃げないチャレンジング・スピリットを持った「強い企業」。三菱商事としては、そのために万全のバックアップをする用意がありますから、ぜひ頑張ってください。
井上 心強いお言葉ありがとうございます。

*J Talk:井上社長と社員が直接対話する場(Jは井上の名前に由来)

 

三菱商事株式会社
代表取締役社長
小島順彦(こじま・よりひこ)
略歴:1 9 4 1 年、東京都世田谷区生まれ。6 5 年東京大学工学部を卒業直前に、フランスとの交換交流で渡仏。その年の5月に三菱商事に入社し、重機部に配属、製鉄プラントのフルターンキービジネスなどを手がける。その後、従業員組合委員長やサウジアラビア出向、ニューヨーク駐在、金融サービス本部長、新機能事業グループCEOなどを経て、2004年4月、代表取締役社長に就任。

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